Flexible Fastly を活用している Bending Spoons、レイテンシを50% 削減し、データ送信コストの大幅な節約も実現

Bending Spoons には、不可能を可能にする歴史があり、世界中の10億人近いユーザーを喜ばせるデジタルプロダクトのポートフォリオを支える技術を開発してきました。

Evernote のようなトップクラスの個人向け生産性向上アプリから、AI 搭載の写真補正・生成ツール Remini まで、多様なプロダクトを展開する同社にとって、各プロダクトが素晴らしい外観を持ち、使いやすく、内部構造も堅牢であることを保証する、適切なエッジクラウドプラットフォームパートナーを見つけることは極めて重要です。

ユーザーベースが増加し、チームが管理するプロダクト数が増加する中、重要なワークロードに対して信頼性が高く、パフォーマンスが優れ、オリジンに依存しないサービスを提供しつつ、競争力のある条件を提供できるネットワークの専門家パートナーを見つけることが優先事項となりました。

幅広いポートフォリオの中でテクノロジープロダクトを取得し、変革することは、ついに憧れの車を自分のガレージに手に入れるようなものです。ボンネットを開けてエンジンを専門家の目でじっくりと観察するまで、その作業の正確な規模はわかりません。Bending Spoons のプラットフォームエンジニア、Davide Pedranz 氏は次のように説明しています。「Cabinet を例にとってみましょう。当初は小規模で資産のみを取得したため、数か月でゼロから現在のアプリに近い状態まで再構築することができました。しかし、Evernote の場合は状況が異なっていました。当社は会社全体を買収し、プロダクトははるかに複雑で、15年間の歴史があったためです。コード行数は約1,000万行に及ぶため、一晩で気軽に読み込んで書き直したりできるものではありません」

キャッシュやロードバランシングテクノロジーからエンタープライズサポートまで、Bending Spoons は、既存のすべてのユースケースをカバーするのに十分なパワーと、将来の買収を通じて野心的な成長をサポートするのに十分な汎用性を備えたプラットフォームに投資したいと考えていました。

積み重なる課題

定期的にプロダクトを取得することで、技術スタックを指数関数的に展開できます。したがって、スムーズで効率的な統合を実現することも、もう一つの大きな課題となっています。

Bending Spoons は Google Cloud Platform (GCP) から始まりました。

ベーススタックは、DNS レコードを管理する Cloud DNS、必要に応じて Cloud CDN、外部 ロードバランサー、Compute Engine 上のマネージドインスタンスグループ (VM)、およびユースケースに応じたさまざまなデータベースでした。必要に応じたキャッシュソリューション (通常はRedis) だけでなく、ファイルの保存には GCS、非同期キューには Pub/Sub、分析には BigQuery も使用しました。

そして、才能があり勤勉な「Spooner」たちが、その「不可能なミッション」を達成するための鍵となるのです。各チームは独自のインフラストラクチャを運用しており、それぞれが独自のインフラストラクチャコンポーネントのライブラリ (Terraform モジュールとして記述) を使用できます。この柔軟でアジャイルな設定により、チームは独立性とスピードを確保しながら、結果としてインフラストラクチャの合理的な統一性を確保できます。

一貫性と統合の実現は困難であり、最近の買収の増加に伴い、その複雑さはさらに増しています。Davide 氏は次のように述べています。「私たちは、インフラストラクチャをリファクタリングまたは再構築して、社内標準に似たものにしようとしています。」たとえば、Evernote を買収した後、数か月で本番環境 (および非本番環境) のインフラストラクチャ全体をゼロから再構築しました」

Evernote の買収により、Bending Spoons は Akamai プラットフォームを継承しました。コンテンツを配信していましたが、主な用途はセキュリティでした。ただし、基盤となるサービスの更新と、よりスマートな減衰対策 (レート制限とリクエストターピット) の展開を組み合わせた新しいソリューションが必要でした。

主要な市場プレイヤーにコンタクトした後、Bending Spoon は Fastly にアプローチしました。Fastly は、より直感的な UI/Terraform モジュール、設定変更のより高速なデプロイ、より強力なプリミティブ (たとえば、バックエンドの制約を考慮するとターピットが優れていた) を提供することができました。「Fastly は市場で注目されている企業だと知っていました」と Davide 氏は言います。「CDN プラットフォームも信頼できそうだったので試してみたところ、とても気に入りました。両社にとってメリットのある条件も見つかったので、よし、行こうと決めました。私たちが切り替えを望んでいると知ると、Akamai は10%安い価格を提示してくれました。それでも、その話には乗りませんでした。私たちは優れたプラットフォームを求めていましたが、Fastly は Akamai よりもすべての面で優れていると判断しました」

Fastly の試行・検証

Bending Spoons は、カスタム設定、サービスの信頼性、構成変更から稼働開始までの時間、Terraform、API、およびドキュメントの適切なサポートなどの重要な基準を備えたベンダーを求めていました。

妥当な商談が成立すると、Davide 氏のチームは Fastly へ移行を計画している主なサービスのユースケースに対して、複雑な VCL 設定、Prometheus による監視、BigQuery へのログ記録などの構成をテストしました。

全体のプロセスは迅速かつ円滑で、商談は3〜4か月間行われ、技術デモには2週間かかり、契約締結前に最初のサービスの移行も完了しました。

導入が完了した Fastly CDN には、主に2つのユースケースがあります。

コンテンツ配信ネットワーク。 多くの場合、ファイルは Cloud Storage (GCS) に保存される静的アセットです。場合によっては、Web アプリケーションによって動的に生成され、バックエンドが提供するキャッシュコントロールヘッダーに応じてキャッシュされます。Bending Spoons は、コンテンツの更新時に Fastly の強力なキャッシュ無効化機能を活用し、積極的なサロゲートコントロールポリシーを採用しています。

送信。Bending Spoons は、この構成でのエッジでのキャッシュには興味を持っていません。その代わりに、Fastly の VCL サービスを展開し、クラウドプロバイダーから Fastly を経由してインターネットへトラフィックを配信しています。

驚くべき Remini の結果

Fastly がフル稼働している中、これまでのところ Bending Spoons のポートフォリオで最も目覚ましい成果を上げているのは、独自の AI モデルを使用してユーザーが画像や動画を改善できるようにするプロダクトである Remini です。

AI がその威力を発揮した後、クライアントは署名付き URL を使用して GCS から強化された画像をダウンロードします。この時点で、Fastly の役割が大きな違いを生み出します。以前は、画像は GCS から直接ダウンロードされていましたが、現在は、署名付き URL が Fastly が管理するカスタムドメインをを指し示し、Fastly が GCS から画像を取得してクライアントに配信しています。コンテンツはユーザーにのみ公開されるため、キャッシュは明示的に無効化されています。

結果を見てみましょう。

Davide 氏は次のように説明します。

「コンテンツは Google から米国の Fastly に (オリジンシールドを介して) 配信され、トラフィックはアムステルダムに送られ、アムステルダムからインドに向けてパブリックインターネットに送られます。このチェーンでは、アムステルダムからインドへの遅延は、Google のプライベートネットワーク経由のインドへの遅延よりも大幅に高くなると予想されます。しかし、Argo Smart Routing と Fastly のパフォーマンスネットワークのおかげで、、実際にはそうはならなかったので非常に満足しています。これが1つの成果です。インドの問題を解決した後、世界中に展開しました。数値も非常に興味深く、以前と比べて約50% 高速化されています」

「ここの2番目のプロットでは、プラットフォームごとに分割されており、ダウンロードステップ (この移行の影響を受けるステップ) からより多くの人々に展開していくにつれて、GCS バケットから画像をダウンロードするエンドツーエンドのレイテンシの中央値が約50% 減少していることがわかります」と、Davide 氏は説明します。

節約できる正確な金額は、クラウドプロバイダーとの契約内容によって異なります。Fastly と Google の提携により、GCP から Fastly へトラフィックを送信する場合の転送料金が割引になります。トラフィック量によっては、大幅な節約になります。

次の曲がり角

Bending Spoons の買収モデルは順調に進んでおり、同社が次に手に入れるプロダクトは WeTransfer です。Fastly がどのように役立つかは現時点ではまだ不明ですが、このプラットフォームは今やツールキットにしっかりと組み込まれています。

「Fastly はパフォーマンスに優れているだけでなく、柔軟性も非常に優れています」と Davide 氏は言います。「従来の VCL アプローチを使い続けても、一般的なクラウドプロバイダーでは利用できないような高度な機能を利用できます。Fastly は BigQuery との連携で豊富なログ記録オプションをサポートしており、Fastly のサービスから指標を Prometheus で取得して監視できます。今後も、当社のプラットフォームや取得またはリリースするプロダクトにおいて、Fastly の新たなユースケースを社内で発見できることを期待しています」