サイバーファイブ : eコマースのビッグウィークに目撃したもの

毎年、ブラックフライデーやサイバーマンデーなどの年末商戦期が近づくと、地元モールや大型店による広告合戦が繰り広げられるものですが、今年は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、例年のような超特価セール感が全くと言って良いほど感じられませんでした。代わりに、リテーラーの割引やプロモーションは、自社の eコマースサイトに移行していました。その商戦期が終了した今、カーブサイドピックアップですでに商品を受け取ってホッとされている方、または商品が届くのを首を長くして待っておられる方がほとんどでしょう。

2020年を通じ、私たちの生活の大半がオンラインに移行されてきた今、この行動シフトが商戦期のにどのような影響を与えたのか見てみたいと思います。以下では、短期および長期にわたり、米国に拠点を置く Fastly のトップ*100社の eコマース/小売業の顧客のトラフィック量 (1秒あたりのリクエスト数) を調べました。また、Fastly 経由でコンテンツを配信している特定の非営利団体/慈善団体のトラフィックパターンを調べ、ギビングチューズデー期間以前、ならびに期間中の活動も観察しました。

主な調査結果は次のとおりです。

  • ブラックフライデーがデジタルスポットライトを独占 : 感謝祭からサイバーマンデーに続く、いわゆるサイバーファイブ期間中、最もトラフィック量が多かったのはブラックフライデーで、eコマースのピークトラフィックは感謝祭より30%以上の増加を記録しました。

  • サイバーウィークのプロモ、お得情報、割引が効果を発揮 : ブラックフライデーとサイバーマンデーの eコマースのピークトラフィックは、前週の金曜日と月曜日に比べてそれぞれ26%と17%増加しました。

  • 早めにスタートした今年のホリデーシーズンのショッピング : 2020年のホリデーシーズン、消費者は例年より早めに商戦期を開始するだろうというメディアの報道は、10月前半にトラフィックが増加し始め、その後11月まで着実に増加し続けたことで裏付けられました。

  • 非営利団体にも恩恵 : 一部の非営利団体/慈善団体でも同様に、ギビングチューズデーのピークトラフィックはサイバーマンデーやその前週の火曜日よりも約60%高くなりました。

日別データ

米トップ100 前日比

ホリデー期間中の週末 (11月25日 (水) から30日 (月) まで) のピークトラフィックレベルを比較したところ、ブラックフライデーがホリデー中の週末で最も高い数値を記録し、サイバーマンデーがブラックフライデーの数値をほんの3.4%下回って、2番目に高かったことが分かりました。長い週末休暇中、ピークトラフィックレベルが最も低かったのは木曜日でした。私たちは、この日、オンラインショッピングよりも友人や家族との交流に時間を費やしていた人が多かったのではないか、と推測しています。ブラックフライデーとサイバーマンデーのピークトラフィックレベルは、ともに木曜日より30%以上増加していました。

興味深いのは、週末の日別トラフィックパターンは以前に観測されたパターンと一致しており、東部時間の午後3時頃にピークを迎えていることです。これは、調査対象のリテーラーが期間限定割引やプロモーションを提供していなかったためと考えられます。もし提供していたとすれば、たとえ短期間でも明らかなトラフィックスパイクや、1日の早い時間帯にトラフィック増加の開始が観察されたはずだからです。

週別データ

米トップ100 前週比

長い週末休暇中のトラフィックパターンを前の週の同一期間のトラフィックパターンと比較してみると、いくつか見えてきたことがありました。ブラックフライデーとサイバーマンデーのピーク時のトラフィックレベルは、当初の予想通り、前の週の金曜日と月曜日のトラフィックレベルを上回って、ピークトラフィックレベルはそれぞれ26%と17%増加していました。感謝祭は、ショッピングよりもお祝いに集中していたため、ピークは前の週の木曜日よりも8.3%低下していました。しかし、この顧客層の総トラフィックは、感謝祭からブラックフライデーにかけて前の週の同期間よりも概ね高い水準を維持しました。

長期的な視点

米トップ100 2ヶ月間

メディア報道では「今年は、買い物客が例年より早めにホリデーショッピングを開始した」との指摘がありました。10月から11月の間に調査対象となった顧客層のトラフィックパターンは、まず最初に10月前半を通じて上昇し始め、その後多くの大手リテーラーがホリデーシーズンの早期割引を開始したこともあり、11月まで着実に増加し続けました。この動向は、メディア報道による主張を支持しているように見えます。感謝祭におけるトラフィックの現象や、その後のブラックフライデーでの増加は、ここでも明らかです。

米トップ100 前年比

例年であれば、多くの人が感謝祭を祝うために、実店舗とオンラインストア両方で提供される超特価セールを利用していました。しかし、過去8ヶ月をほぼ完全にオンラインで過ごした後、今年多くの人は、お気に入りの eコマースサイトで積極的に掘り出し物を求める代わりに、一歩離れて別に追い求める対象と機会を得ました。2020年の週末休暇のトラフィックトレンドを2019年のそれと比較してみると、そのような行動の変化がはっきりと見て取れます。昨年の eコマース顧客のトラフィックは感謝祭前に増加し始め、ブラックフライデーに向けて急速に増加し、その後サイバーマンデーでピークを迎えました。しかし、2020年の同トラフィックは11月までゆっくり増加しており、これはリテーラーによる早めのホリデーセールに起因するものと思われます。感謝祭の週が始まると同時にトラフィックは明らかに減少し始め、感謝祭当日にその週の最低ポイントに達します。予想通り、ブラックフライデーのトラフィックは増加し、上述したように、サイバーマンデーよりも高いピークトラフィックを記録しました。

地域別データ

この他にも、私たちは南北アメリカ (米国、カナダ、メキシコ、ラテン/南米)、EMEA、アジア太平洋 (APAC) 地域の各リージョンの上位 eコマース顧客群における、週末休暇中のトラフィックを分析しました。ただし、11月の最終木曜日である感謝祭と、それに伴う週末ショッピングは米国の習慣として残っているため、ここでは詳細な分析は行わず、代わりにいくつかの高レベルでの観察結果を提示するだけに留めます。

  • 南北アメリカ : この顧客群の大半は米国のリテーラーで構成されているため、トラフィックパターンとピークタイミングは、米国の顧客群で観察されたものと類似していました。ただし、米国外に拠点を置きながら、米国内のユーザーからのトラフィックがある eコマースサイトが含まれているため、毎日のピークトラフィックレベルと前の週のピークトラフィックレベルの間には顕著な差が見られました。

  • EMEA : この地域で最も低いピークが観察されたのは土曜日で、米国で観察された木曜日 (感謝祭) ではありませんでした。この観測は、前の週のトラフィックと一致しています。最も高いピークはブラックフライデーに観察されましたが、他の日に比べて特に有意に高いわけではありませんでした。その前の週で、最も高いトラフィックが観測されたのは日曜日と月曜日でした。

  • アジア太平洋地域 (APAC) : この地域で最も低いピークトラフィックが観察されたのは土曜日で、最も高かったのは水曜日でした。週末休暇中の他の日におけるトラフィックのピークはクラスタ化しており、日ごとに名目上の違いが見られました。前週のトラフィックを見ると、最大の違いは金曜日に見られ、週毎における他の日のトラフィックパターンはかなり近接していました。

Giving Tuesday (ギビングチューズデー)

Giving Tuesday (ギビングチューズデー) 日単位

サイバーマンデーの翌日はギビングチューズデーと呼ばれ、この日は小売商品やサービスへの支出が慈善団体や非営利団体への寄付にシフトしています。非営利/慈善団体系の顧客群へのトラフィックを見てみると、トラフィックが寄付へのアピールの結果として、前日の月曜日 (サイバーマンデー) に増加していることがはっきり見てとれます。しかし、翌日のギビングチューズデー当日のピークは前日の月曜日より60%ほど高く、トラフィックは1日を通して概ね高い水準を保っています。

Giving Tuesday (ギビングチューズデー) 週単位

前週比でも、ギビングチューズデーのピークトラフィックは、前週の火曜日より約60%ほど高くなっていました。これら組織における木曜日 (感謝祭) と金曜日 (ブラックフライデー) のトラフィックは、前週よりもわずかに減少していました。週末とサイバーマンデーのトラフィックは前週とほぼ同じでした。

Giving Tuesday (ギビングチューズデー) 年単位

2020年のギビングチューズデーのトラフィックを前年2019年のそれと比較してみると、ブラックフライデーからギビングチューズデーへのトラフィックの伸びは前年比でほぼ同じだったことがわかります。興味深いことに、この顧客群における2020年のホリデー前4週間のトラフィックパターンは、2019年のそれと非常によく似ていました。最も顕著な違いは、前年の感謝祭におけるトラフィックの急増ですが、2020年の感謝祭のトラフィック減少は、上述のコマース顧客のトラフィックパターンと一致しています。

最後に

パンデミック駆動による「Zoom 疲れ」にもかかわらず、私たちの多くは、実際に旅行して遠く離れた家族や友人たちと感謝祭を祝う代わりに、Zoom などのリモート会議ツールを使用することを選びました。そもそもはお祝い目的だったのかもしれませんが、トップ eコマース企業のトラフィックパターンを分析する限りは、「通話終了」をクリックした後はリモート会議ツールからログオフして、そのままブラックフライデーのセールが始まるのを待っていたことがわかっています (予期されていた「シッパゲドン (shipageddon)」対策として、月の初めに賢く買い物を済ませていた場合もありますが)。

*Fastly 経由で配信された総トラフィック (GB) 別。

David Belson
Data Insights、Sr. Director
投稿日

この記事は6分で読めます

興味がおありですか?
エキスパートへのお問い合わせ
この投稿を共有する
David Belson
Data Insights、Sr. Director

David Belson は、Fastly の Senior Director of Data Insights として、計画的または機会に応じたデータ主導のストーリー作成を統括し、組織全体を通じてこれらのデータインサイトをお客様とオープンソースコミュニティのために活かせるように尽力しています。David は25年以上に渡り、Internet Society、Oracle の Internet Intelligence チーム、Akamai Technologies などの組織で同様の任務を歴任し、同分野のプログラムを実施してきた経験があります。

Fastly試してみませんか ?

アカウントを作成してすぐにご利用いただけます。また、いつでもお気軽にお問い合わせください。