Fastly エッジクラウドプラットフォーム

株式会社毎日放送

株式会社毎日放送は、大阪を拠点とする民間放送局として、テレビ・ラジオ放送を中心に多様なコンテンツを制作・発信している。ニュースや情報番組、スポーツ中継、ドラマ、バラエティなど、幅広いジャンルで長年の実績を持ち、関西発の情報や文化を全国に届けてきた。近年は放送に加えて公式Web サイトや見逃し配信などの動画配信にも注力。視聴者がさまざまな環境からコンテンツに触れられる体制を整えながら、質の高い情報と番組の提供に取り組んでいる。

Fastly 導入で画像データ量82%削減、表示速度最大76%改善

放送局のWeb 基盤には、アクセス集中時でも止まらず、迅速に改善を回せる運用力が求められます。株式会社毎日放送(MBS)では、少人数体制のままCDN やセキュリティを主体的にコントロールできる環境を目指し、Fastly を採用した。「自走できる運用」を軸に、スピードと安全性をどのように両立してきたのか。その取り組みと手応えについて、株式会社毎日放送コンテンツ戦略局の村田 博司氏と山下 遼河氏に話を聞いた。

アクセス集中・即時更新・安全性が大前提。放送局ならではのWeb 運用とは?

―まずは御社事業におけるWeb メディアの役割について教えてください。

村田様(以下、村田)かつて、Web は主に放送を補完する存在でしたが、現在では放送と並ぶ重要な情報発信基盤になっています。公式サイトでは、番組告知に加え、放送内容の補足、ニュースの速報配信、イベント情報の発信、スポーツ中継のライブ配信など、幅広い役割を担っています。特にニュース等では速報性と正確性が求められ、放送内でWeb を案内した直後や大きなニュースが発生した際には、アクセスが急激に集中します。そのような状況でも安定して情報を届け続けることが、放送局としての信頼性を支える重要な要素です。放送局にとってWebは「止まらないこと」「正確に届け続けること」を前提とした、欠かすことのできないインフラです。

― Web メディアを運営する上で、以前はどのような課題を抱えていましたか?

村田:2024 年以前はオンプレミス環境でWeb サイトを展開しており、サーバー管理は情報システム部門、システムの中身や運用は我々の部署と役割が分かれていました。そのため、設定変更や調整が必要な場面では部門間のやり取りが発生し、運用面で小回りが利かない状況でした。こうした課題を解消するため、2024 年5 月にWeb 基盤をクラウドへ全面的に移行しました。サーバー周りの柔軟性は大きく改善した一方、CDN は引き続き外部事業者に委託していたため、設定変更や構成変更のたびに調整が必要となり、スピードや柔軟性に課題が残っていました。山下様(以下、山下):セキュリティ面でも、いくつか課題がありました。Web の重要性が高まる一方で、当時はCDN に関する知見が十分ではなく、キャッシュ戦略を含めて主体的に改善を進められておらず、運用や対策が受け身になりやすい状況でした。また、限られた人数でWeb 全体を運用していたため、新たな脆弱性への対応や脅威動向の把握に継続的に時間を割くことが難しく、一部のサイトではWAF やDDoS 対策が未導入の状態。安定したWeb 運用のためには、より体系的なセキュリティ強化が不可欠でした。

運用を自走させるCDN 設計と、学び合うカルチャー

―課題解決にあたってFastly を採用された理由を教えてください。

村田:新たなCDN ソリューション導入で最も重視したのは、「少人数で複数業務を掛け持つ体制の中でも、メンバーに過度な負担をかけず自走できるか」という点です。Fastly には、パフォーマンスや柔軟性に優れたCDN である一方、コードベースでの制御が前提で運用が難しそうという印象がありました。しかし担当者の説明を受けると、VCL による設定が明快で、WAF やDDoS 対策も専任エンジニアなしで運用可能とわかり、導入を前向きに検討する確信を得ました。さらに、Fastly のカルチャーに触れたことも導入の大きな決め手となりました。特に2024 年に参加したユーザーイベント「Yamagoya」(現・Xcelerate)では、各社が自社の事業領域に合わせFastly を工夫して活用する様子を知り、最先端のCDN 活用の具体像をイメージできました。加えて、Fastly 社員によるHTTPの最新動向や運用ノウハウに関するセッションでは、単なるサービス提供だけでなく、ユーザーと知見を共有しながら技術的理解を深めようとする姿勢に触れ、私たちも視野を広げ、成長しながら活用できる実感を持つことができました。こうした体験を通じ、Fastly は技術的知見を吸収しつつ事業やサービスに還元できる環境を提供してくれる存在だと確信し、導入を決めました。導入は期待以上にスムーズで、2025 年2 月からトレーニングを含めて構築を開始し、テレビとラジオの公式ホームページについては、約1 カ月半でリリースまでこぎつけました。番組の見逃し配信やオリジナル動画を提供する動画配信プラットフォーム「動画イズム」については、CDN に加えてイメージオプティマイザーの適用も含め、約3 カ月をかけて対応しました。WAF とDDoS 対策についても、それぞれ約2 カ月の期間を設けながら段階的に導入を進めました。

“ 自分たちが動かせるWeb” へ。高速化・安定化・内製化を一気に前進させたFastly

―Fastly 導入によって、どのような効果がありましたか?

村田:最も大きな効果は、Web の管理・運営で、スピードと安心感を同時に得られたことです。以前は設定変更に要する時間が読めず慎重にならざるを得ませんでしたが、今は「まず試してみよう」と、すぐに行動できるようになり、Web 施策全体の回転速度が向上しました。特に懸案だったCDN を自分たちでコントロールできるようになった点は大きく、TTL の見直しやサルゲートキー機能によりコンテンツ単位でキャッシュを柔軟に制御することで、速報性が求められるニュースや番組連動コンテンツでも、意図したタイミングで確実に情報を更新できるようになりました。結果として、アクセス集中時でも安定したパフォーマンスを維持できています。また、イメージオプティマイザーにより、動画イズムのトップページでは、画像データ量を約82%削減し、ページの表示時間も最大で76%短縮。特にモバイル環境での体感速度が向上し、視聴者の閲覧体験を改善できました。山下:セキュリティ面では、Next-GenWAF を自分たちで管理・運用できるようになったことが最大の変化です。新たな脆弱性に関する情報が共有されると、Fastly からの通知を受けバーチャルパッチによるルール適用を迅速に行えるため、システム側での修正完了までのリスクを抑えた運用ができています。専門のセキュリティエンジニアが常駐していない体制でも、状況に応じた判断と対応が可能になった点は大きな前進です。DDoS プロテクションも、必要なときにはトグルをオンにするだけで即時有効化できるため、運用負荷やコストを抑えつつ防御体制を整えられます。日常の運用を圧迫せず万一の事態に備えられる点は、大きな安心材料になっています。特にコンピュートに関しては、OGP の生成や、一時的なフォームなどの軽量なマイクロフロントエンド的なアプリ基盤として、エッジ上で完結させる形で活用しました。一時的なフォームについてはDDoS プロテクションも活用でき、「こんなに簡単でいいのか」と驚くほどスムーズに、かつセキュアな状態でアプリをデプロイ(公開)できました。軽量アプリの運用効率を大きく高められたと感じています。

知見を共有しながら、進化し続けるWeb 基盤を目指す

―Fastly のサポート体制について、評価をお聞かせください。

村田:想像以上に距離が近く、実務に寄り添った対応をしてもらえていると感じています。単なる問い合わせ対応にとどまらず、こちらの構成や運用体制を理解したうえで、よりよい設定や考え方を一緒に整理してもらえる点が印象的でした。少人数運用だからこそ、そうした伴走型サポートは非常に心強い存在です。また、Fastly 主催イベントへの登壇は大きな経験になりました。自分たちの取り組みを言語化し発信することで、運用意図や判断の背景を整理できましたし、他社のエンジニアや運用担当者との意見交換から新たな視点や気づきも得られました。結果として、自社の運用を客観的に見直すきっかけにもなっています。

―最後に現在の課題や今後の展望について教えてください。

村田:課題は大きく分けて2 つあります。1 つ目は、CDN 運用ノウハウのチーム内展開です。現状は私と山下の二人が中心ですが、今後は他のメンバーとも知見を共有し、チーム全体で対応できる体制を整えていきたいと考えています。2 つ目はキャッシュ戦略の高度化です。TTL をできるだけ長く設定し、コンテンツ更新時に能動的にキャッシュをパージする運用に切り替えることで、キャッシュ効率を高めつつ、ユーザーには常に最新のコンテンツを届けられるのではないかと期待しています。私自身、エンジニアとして放送局のコンテンツ価値を最大化することに技術面から貢献していきたいと考えていますが、そのためには最新の技術動向の継続的なインプットが不可欠です。そうした知見をFastly から提供いただき、それをFastlyのプロダクトを通じて実装し、事業やサービスに還元していければ理想的だと考えています。だからこそFastly には、単なるサービス提供者ではなく、技術的なパートナーとして並走していただきたいと考えています。お互いに知見を共有しながら