AI やボット、自動化プログラムがインターネットにもたらす変化に焦点を当てた、最新の Fastly 脅威インサイトレポート「AI、ボット、エージェント主導の Web の未来」では、インターネット上の全リクエストの約半分がボットによるものであることが明らかになりました。さらに、このレポートを通じて、「業界によって AI の影響が異なる」ことが浮き彫りになりました。悪意のある自動化プログラムが増えている業界がある一方で、AI のような「望ましい」ボットによって事業モデルが根本から変化し、新たな運用やインフラストラクチャの課題に直面している業界もあります。
特にeコマース業界では、AI による影響は単なるトラフィックの変化にとどまらず、戦略とオペレーションの両方に課題をもたらしています。リテーラーは早急にボット検知・対策ツールへの投資を強化し、サイトのパフォーマンス、在庫、データの整合性を保護する必要があります。また、自動化されたトラフィックの存在は、コンバージョン指標やアトリビューションモデルを歪め、誤ったビジネス上の決定につながる可能性があります。
そのため、eコマースは AI 主導のトラフィックによって、最も戦略的影響を受けやすい業界のひとつとして挙げられます。
eコマース業界におけるボットの現状
ボットによって、eコマース業界が変わりつつあります。プロダクトページへのアクセスからショッピングカートの操作に至るまで、ボットはユーザーの行動を大規模にシミュレートすることができ、価格のモニタリングや競合分析、不正広告、さらには分析の操作といった目的で使用されることもよくあります。そのため、eコマースサイトでは、本物のカスタマージャーニーによるものではないトラフィックの割合が増加し、正確な需要の測定、マーケティング支出の最適化、ユーザー行動の解釈がますます困難になっています。たとえ望ましいボット(eコマースサイトが「求める」ボット)であっても、より広範な影響を考慮しなければなりません。
第一四半期のレポートでは、以下のeコマース業界の現状が明らかになりました。
グローバル基準値と比べて人間によるトラフィックが5%多い
グローバル基準値と比べて望ましくないトラフィックが5%少ない
グローバル基準値と比べて望ましいトラフィックが43%多い
これらの数字は一体何を意味するのでしょうか?また、より広い意味で、AI やボットによるトラフィックはeコマース業界にどのような影響をもたらしているのでしょうか?以下のセクションでは、これらの問いに対する答えを探ります。
現在のeコマース業界の状況
まずは、eコマース業界の現状について見てみましょう。これにより、レポートの調査結果と、eコマースサイトにおけるそれらの意味を理解するのに役立つコンテキストが得られます。
データ信頼性の課題
AI 主導のトラフィックによって、eコマースが根本的な変化を迎えています。基本的なレベルでは、人間以外によるサイトへの訪問、商品の閲覧、ショッピングカート内のアクティビティの割合が増加しています。そのため、サイト所有者はこの状況に対応できる体制を整える必要があります。AI ボットは、商品カタログのスクレイピングや価格のリアルタイムモニタリング、決済フローのテスト、ユーザージャーニーの大規模なシミュレートなどを行います。その結果、eコマースは純粋に顧客主導の環境から、自動化プログラムによって複雑さが増している環境へと移行しています。
そして、その影響を大きく受けているのがデータの信頼性です。eコマース企業は長い間、行動シグナル(クリック数、ページ滞在時間、コンバージョン率など)に基づいてビジネス決定を行ってきました。しかし、アクティビティのかなりの部分がボットによるものである今、それらのシグナルの意味が、わかりづらくなりつつあります。例えば、人間による需要を反映していない行動に基づいて最適化を行うリスクがあります。これにより、マーチャンダイジングから広告費、さらには全社的なビジネス決定に至るまで、あらゆる側面で歪みが生じる可能性があります。
競争への影響
AI 主導のトラフィックにより、価格競争が加速し、市場効率も向上しています。ボットによって継続的に競合企業の価格をリアルタイムで追跡できるため、動的な価格戦略が可能になります。これは、より安く商品を購入できるというメリットを消費者にもたらす可能性がある一方で、eコマース企業の利益率を圧迫し、価格の優位性が短期間で失われる高速なフィードバックループを生み出します。
セキュリティリスク
AI 主導のトラフィックによって、インフラストラクチャとセキュリティの優先事項にも変化が見られます。自動化された大量のトラフィックを処理するために、サイトのパフォーマンスに負担がかかり、(インフラストラクチャ、帯域、コンピューティングに関連する)コストを押し上げています。同時にリテーラーは、限定商品の在庫を狙う転売屋などによる高度なボットや、自社の独自データを抽出するスクレイピングボット、個人アカウントに保存された情報の悪用を狙うクレデンシャルスタッフィング攻撃に対抗しなければなりません。そのため、ボット検知、レート制限、トラフィックのフィルタリングが不可欠です。
eコマースは、人間中心の環境から、自動化されたインタラクションを継続的に識別して戦略的に活用しつつ、それらからビジネスを保護する必要がある環境へと進化しています。
第1四半期の調査結果 : eコマース
上記の背景を踏まえて、今四半期の統計データを詳しく見てみましょう。
1.「望ましい」ボットが増えるほど負荷も増大
自動化プログラムと人間によるトラフィックがほぼ同じ割合を占める中、eコマース業界における望ましいトラフィックの割合は43%と、グローバル基準値の1%を大幅に上回っています。この結果は懸念をもたらし、さらに詳しく調査する必要があります。
この43%は「本当に」望ましいトラフィックなのでしょうか?このいわゆる「望ましい」トラフィックと望ましくないトラフィックを区別できる適切なボット管理ポリシーとツールが導入されていますか?また、このように大量の自動化されたトラフィックがWebサイトにアクセスした際に、ビジネスの成果(プラスとマイナスの両方)を決定づける堅牢なボット戦略が実行されていますか?
検索エンジンのクローラーやフェッチャーなどの望ましいボットであっても、それらが大量にサイトにアクセスすると、短期的にeコマースのインフラストラクチャに負荷がかかる可能性があります。人間とは異なり、これらのボットは何気なく閲覧するのではなく、サイトの大部分を体系的にクロールし、多くの場合、短時間に連続して数千ページにアクセスします。その結果、サーバー負荷が増大し、帯域の消費が増え、特にピークトラフィックの期間と重なると、本物の顧客へのサイトパフォーマンスが低下する可能性があります。
在庫や価格が頻繁に変動する動的なeコマース環境では、ボットが最新の情報を取得するために同じページを繰り返しリクエストすることがあり、負荷をさらに増幅させる可能性があります。また、eコマースサイトでは、SEOの全盛期から続く「従来型」のスクレイピングがより多く見られます。これは、確立されたクローラーが過去から現在に至るまでルーチンの一環としてこの種のコンテンツを優先しているためです。現にeコマースサイトへのボットトラフィックの36%はGoogleが送信元でした。
厄介なのは、多くの場合、このような望ましいトラフィックには高い価値があるということです。検索における可視性を高め、AI検索ツールに情報を提供し、正当な統合をサポートするためです。したがって、このようなトラフィックを完全にブロックすることは問題の解決につながりません。リテーラーは、望ましいトラフィックを正確に評価するのに役立つ高度なボット管理ツールと戦略に投資し、自社サイトに本当に必要なトラフィックについて、十分な情報に基づいて判断できるようにする必要があります。
2. 人間の行動特性が人間の訪問を促進
第一四半期は、eコマースにおける人間のトラフィックがグローバル基準値の51%を5%上回っていました。これは、人間が依然としてオンラインで積極的に買い物をしていることを示しています。一方、パブリッシングを含む他の多くの業界では、「AI 時代」の到来によって、人々がウェブを利用する方法に変化が生じています。例えば、ニュース記事を検索すると、検索ページの上部に AI による要約が表示され、知りたかった情報が得られることがよくあります。このように、知識(データやニュース、情報など)を提供するあらゆる業界では、AI による人間のトラフィックへの影響がより大きく見られます。ユーザーが、検索クエリに対する答えを得るために、わざわざ検索結果をクリックしてホストサイトにアクセスする必要がなくなったためです。
eコマースサイトで人間によるトラフィックの量が多いのは、オンラインショッピングの性質を反映していると考えられます。つまり、第一四半期の数字は、本物の人間のユーザーが依然として在庫を閲覧することを楽しんでいることを示唆しています。ただし、差は5%と小さいため、これは単に分析中のトラフィックの動的な性質を反映している可能性もあります。今後も動向を注視し、結果をご報告します。
3. eコマースは標的になりにくい
第一四半期でおそらく最も興味深かったのは、eコマースでは、グローバル基準値の48%と比べて望ましくないトラフィックが5%少なかったという調査結果です。これは、他の業界のサンプルに比べ、eコマースサイトでは、検証不能で悪意がある可能性のある、または疑わしいトラフィックが少なかったことを意味します。
前四半期のレポートでは、ヘッドレス自動化、つまり、機械的なスピードで大規模にWebサイト上で実際のユーザー行動を模倣できる、フル機能の自動ブラウザについて詳しく掘り下げました。前回は、eコマースサイトで最も多くのヘッドレストラフィックが観測され、実に全体の45%を占めていました。これはおそらく、eコマースサイトでは攻撃者がアカウントを侵害したり、リアルタイムで在庫データや価格データをスクレイピングして値下げを図ったり、販売状況を不正に探ったりできることが一因であると考えられます。さらに、ヘッドレスクライアントを介して正規のトラフィックを装うことで、セキュリティツールの干渉をあまり受けずにこれらすべてを実行できます。
ここで重要なのは、他の業界よりも若干、良い状況にあるとはいえ、eコマースは依然として悪質な活動の格好の標的であるということです。第一四半期の5%という数字は、一般的な変動の反映とも考えられ、迷惑なボットへの対応を怠ってよいという意味ではありません。全世界のトラフィックの48%が迷惑なボットであることを示すグローバル基準値より5%少ないだけで、依然として悪意のあるボットの活動によって大きな影響を受ける可能性があります。
eコマース組織に今できること
AI 主導のトラフィックへの適応は、すべてをブロックするか、すべてを許可するかの二者択一ではありません。可視性、コントロール、収益化、保護の側面を意図的に考慮して戦略を立てる必要があります。
可視性を高める。どのボットがコンテンツにアクセスし、何を取得しているのか、トラフィックはキャッシュとオリジンのどちらからコンテンツを取得しているか、どのボットのアクティビティがビジネス目標に沿っているかを把握できる必要があります。
単純なブロックを超える対策を導入する。今日の AI トラフィックには、従来の許可/ブロックのアプローチではなく、より目的に特化したコントロールが必要です。自動化プログラムの中には、可視性の向上や収益機会をもたらすものもありますが、単にコストやリスクを生み出すだけのものもあります。
AI トラフィックの収益化を検討する。AI プラットフォームが質の高いコンテンツを求め続ける中、AI によるアクセスを収益化する戦略を検討する企業が増えています。強力な可視性とガバナンスコントロールを備えた組織は、AI によるアクセスが自社のビジネス目標達成にどのように役立つかを最も判断しやすい環境にあります。
迷惑なボットを欺く。Fastly のディセプション機能によって、誤解を招くシグナルを攻撃者に送ることで、自動化された不正行為の効果を低下させ、悪意のあるボットの活動を妨害できます。

ボット戦略をレベルアップ
AI によって、オンラインで情報が発見され消費される方法が急速に変わりつつあり、eコマースはその変化のまさに中心にあります。組織が、さらなる AI の影響に効果的に適応するには、単にすべてをブロックするのではなく、AI によるトラフィックを管理できる必要があります。
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